英語圏5か国による移民情報共有 ― 「M5」とは何か?
- 中川 洋志
- 7月1日
- 読了時間: 3分
「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」という言葉をご存じでしょうか。
これは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国による情報共有同盟を指し、世界で最も強力かつ長い歴史を持つ諜報ネットワークのひとつとされています。
起源は第二次世界大戦中にさかのぼります。1941年、アメリカのルーズベルト大統領とイギリスのチャーチル首相が、暗号情報を共有することで合意したことが出発点です。戦後の1946年には、米英間で正式な通信傍受協定「UKUSA協定」が締結され、のちにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドも加わり、現在の「ファイブ・アイズ」が形成されました。
このUKUSA協定は長らく秘密とされてきましたが、2005年にその存在が初めて公式に認められ、2010年にはアメリカ国家安全保障局(NSA)とイギリス政府通信本部(GCHQ)によって全文が公開されました。
ファイブ・アイズは主に以下の目的で情報を共有しています:
通信傍受(シギント)
サイバーセキュリティ
テロ対策さらに近年では、移民・難民審査の分野においても、この枠組みが活用されていることがわかってきました。
「Migration Five(M5)」とは?
移民・国境管理に特化した協力体制は「Migration Five(M5)」とも呼ばれます。ファイブ・アイズの5か国は、ビザ申請者や難民、犯罪歴のある人物に関する 生体認証情報(指紋等)や個人情報(氏名や生年月日など)を共有するための仕組み を構築しているとされています。
ただし、すべての情報が自動的にリアルタイムで共有されているわけではありません。
ニュージーランドのメディアが情報公開請求により入手した公的文書によれば、
「2020年にリアルタイムのデータ交換を導入したが、主に指紋情報の共有に限られており、顔写真や氏名などの自動共有は実施されていない。これらの情報については、原則として個別の照会を経て共有されている」と報じられています。
各国間の審査結果は相互に影響しうる
当事務所でも、「アメリカで入国拒否された方が、オーストラリアでも同様の理由で拒否された」あるいは「その逆のケース」のご相談を受けることが少なくありません。
このことから、M5のいずれかの国でネガティブな判断を受けた場合、それが他の国の審査にも影響を与える可能性があると考えられます。
もちろん、それだけで他の国への渡航が完全に不可能になるわけではありませんが、・入国拒否やビザ却下の理由が事実と異なる・審査官による誤解に基づく判断だったといった場合には、それを明確に説明できない限り、次の審査はより厳しいものになるかもしれません。
不安がある方は、まずご相談を
アメリカやオーストラリアでの入国拒否やビザの却下は、今後の渡航計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。理由によっては、他国でのビザ審査や入国にも影響するケースがありますので、不安をお感じの方は専門家へご相談されることをおすすめします。




