ETIAS最新情報(2025年11月1日)
- 中川 洋志
- 11月4日
- 読了時間: 8分
現在、日本国籍をお持ちの方は、ヨーロッパの多くの国への渡航は、ビザなしで気軽に楽しめるものです。
しかし、今後、新たに導入される渡航認証制度「ETIAS(European Travel Information and Authorisation System)」によって、その手軽さに変化が起こります。当初は、2021年開始予定でしたが、延期を繰り返し、現在の公式の最新の発表では、2026年第4四半期(10月~12月)となっています。
この記事では、欧州連合(EU)の公式ウェブサイト(travel-europe.europa.eu)で発表されている情報に基づき、現時点でわかっているETIASの重要ポイントを分かりやすく解説します。
ETIAS(エティアス)とは?
ETIAS(欧州渡航情報認証制度)は、ビザ免除国の国民が対象の欧州30カ国へ渡航する際に必要となる電子渡航認証です。
この制度は、渡航者のパスポートに電子的に関連付けられ、有効期間は最長3年、またはパスポートの有効期限が切れるまでのいずれか短い方となります。
ETIAS認証を取得すると、180日の期間内に最大90日間の短期滞在が可能になりますが、これは入国を保証するものではありません。最終的な入国許可は、国境警備官による入国審査によって決定されます。
申請は公式ウェブサイトまたは公式モバイルアプリから行い、費用は20ユーロです(一部免除対象者あり)。
ほとんどの申請は数分で処理されますが、追加情報や面接が必要な場合は最大30日かかる可能性があるため、早期の申請が推奨されています。
申請情報とパスポート情報が完全に一致していることが極めて重要であり、誤りがある場合は搭乗や入国が拒否される可能性があります。商業的な仲介業者を通じた代理申請も可能ですが、詐欺や不当な料金請求などのリスクが伴うため、十分注意されてください。
(実際、一見公式のようなETIASサイトがすでにインターネットに出回っています。)
ETIAS渡航認証は、ビザを免除されている国籍の者が、ETIASを導入している欧州30カ国へ渡航する際の入国要件です。
対象国は以下の通り。
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイスの30カ国。
ETIAS渡航認証は渡航文書(パスポート)に直接関連付けられているため、国境では申請時に使用したのと同一のパスポートを提示する必要があります。情報が一致しない場合、航空機、バス、船舶への搭乗やETIAS対象国への入国が許可されません。国境警備官は、ETIASの有効性だけでなく、渡航者がすべての入国条件を満たしているかを確認し、条件を満たさない場合は入国を拒否します。
他の電子渡航認証と同様、以下の点には十分注意しましょう。
• 航空券の購入や宿泊施設の予約前に、十分に余裕をもってETIASを申請する。
• パスポート情報とETIAS認証の情報が完全に一致していることを確認する。
• ETIAS渡航認証がまだ有効であることを確認する。
• ETIAS対象国での滞在可能期間を確認する。
• パスポートがETIAS対象国からの出国予定日から3ヶ月以上有効であることを確認する(例外あり)。
申請プロセス
申請方法と費用
申請は、ETIAS公式ウェブサイトまたはETIAS公式モバイルアプリケーションを通じて行います。
• 申請費用: 20ユーロ。
• 費用免除対象者:
◦ 18歳未満または70歳以上の申請者。
◦ EU市民の家族。
◦ EU域内での自由な移動の権利を持つ非EU国籍者の家族。
処理時間
ほとんどの申請は数分以内に処理されるとされていますが、何かしらの事情で申請の処理に時間がかかる場合は、4日以内に決定を通知するとしています。また、追加情報や書類の提出を求められた場合、この期間は最大14日まで延長される可能性があります。なお、面接に招待された場合、最大30日まで延長される場合もあります。
基本的にはスピーディな審査となるかと思いますが、上記のように、遅延の可能性を考慮して、計画された渡航より十分に前に申請することが強く推奨されています。
申請後の流れ
1. 申請を提出すると、申請が受理されたことを確認するメールが届きます。このメールには、将来の参照のために保管すべき固有のETIAS申請番号が含まれています。
2. 申請が処理され、結果を知らせる別のメールが届きます。
3. ETIAS渡航認証が承認された場合、氏名、パスポート番号、その他の情報が正確であることを必ず確認してください。誤りがあると、国境を越えることが許可されません。
4. 申請が却下された場合、メールにはその決定理由が記載されます。また、不服申し立ての方法、管轄当局の詳細、申し立ての期限に関する情報も含まれます。
3. ETIASの対象者
ETIASが必要な渡航者
①日本、米国、英国、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾、ウクライナなど、指定されたビザ免除国・地域の国籍保有者。
②ビザが必要な国の国籍を持つ学生で、特定の条件(教員の引率、EU域内在住など)を満たす場合。
③アイルランドまたはいずれかのETIAS対象国に居住し、その国が発行した渡航文書を所持する、特定の条件を満たす認定難民。
④アイルランドまたはいずれかのETIAS対象国に居住し、その国が発行した渡航文書を所持する、特定の条件を満たす無国籍者。
ETIASが不要な渡航者
以下のカテゴリーに該当する渡航者は、ETIAS渡航認証を申請する必要はありません。
• ETIASを要求する欧州諸国の国民。
• アンドラ、サンマリノ、モナコ、バチカン市国、またはアイルランドの国民。
• ETIAS対象国が発行した滞在許可証または滞在カードの所持者。
• シェンゲンビザ(uniform visa)または各国の長期滞在ビザの所持者。
• 英国のEU離脱協定の受益者である英国国民とその家族。
• 特定の国際協定に基づきビザが免除されている外交、公用、または特別パスポートの所持者。
• NATOまたは「平和のためのパートナーシップ」の業務で渡航する軍隊の構成員(私的目的の渡航を除く)。
• 特定の条件を満たす民間航空機・船舶の乗組員。
英国籍保有者に関する特記事項
英国籍保有者がETIAS対象国へ短期滞在(180日間に90日)で渡航する場合、有効なETIAS渡航認証が必要です。これより長く滞在する場合は、ビザや滞在許可証など、各国またはEUの移民法に従った入国要件を満たす必要があります。また、EU離脱協定の受益者である英国国民とその家族はETIASが免除されます。
申請要件
渡航文書(パスポート)の要件
①ETIAS対象国からの出国予定日から3ヶ月以上有効であること。
②発行から10年以内であること。
③一部の国や地域が発行した渡航文書には、特定の要件が適用されます。
国・地域 | ETIAS申請が可能な渡航文書 |
アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア | 生体認証(バイオメトリック)パスポート |
ジョージア、モルドバ、ウクライナ | 国際民間航空機関(ICAO)基準に準拠した生体認証パスポート |
香港特別行政区 | 香港特別行政区発行のパスポート |
マカオ特別行政区 | マカオ特別行政区発行のパスポート |
台湾 | IDカード番号が記載された台湾発行のパスポート |
上記以外のパスポートを所持する場合、ETIAS対象国への入国にはビザが必要です。
申請に必要な情報
申請フォームに入力する必要がある情報は以下の通りです。
• 個人情報: 氏名、姓、生年月日、出生地、国籍、住所、両親の名、メールアドレス、電話番号。
• 渡航文書情報
• 学歴と現在の職業
• ETIAS対象国への渡航と滞在に関する詳細
• 経歴に関する情報: 犯罪歴、戦争・紛争地域への渡航歴、過去の退去強制命令の有無。
申請者は、提出するデータと供述が正確であることを宣言する必要があります。
第三者による代理申請
申請者本人に代わり、第三者(個人または商業的仲介業者)がETIAS申請を行うことが可能です。その際には、申請者と第三者の両方が「代理申請に関する宣誓書(declaration of representation)」に署名する必要があります。この宣誓書は、申請者一人ひとりについて個別に作成・署名される必要があります。
限定的ETIAS(ETIAS travel authorisation with limited validity)
以下の両方の条件を満たす場合、有効性が限定されたETIASを要請することができます。
1. 人道的理由または重要な義務を果たすために渡航する必要がある。
2. 通常のETIAS申請が承認されないと予想される、またはすでに却下、取り消し、無効化されている。
考慮される状況の例には、申請者または近親者の生命を脅かす病気、近親者の葬儀への参列、緊急の医療、政府間会議への参加などがあります。
限定的ETIASは、通常のETIASとは異なり、渡航認証で明示的に指定された国にのみ渡航が許可されます。有効期間は各国の当局によって決定され、入国時から最大90日間ですが、期間内であれば、複数回の入国が可能です。
却下、取り消し、無効化と不服申し立て
ETIAS申請が却下された場合、または取得済みの認証が取り消し・無効化された場合、その決定の根拠と決定を下した当局を記載したメールが届きます。
• 不服申し立ての権利: 申請者には不服を申し立てる権利があります。メールには、どの欧州諸国に対して申し立てを行うべきか、および関連する手続きが記載されています。
• 手続き: 不服申し立ては、対象国の国内法に従って処理されます。
• 例外: 申請者自身の要求により渡航認証が取り消された場合、その決定に対して不服を申し立てることはできません。
以上、現在の公式情報からわかるETIASの重要ポイントについてまとめました。
注意が必要なのは、過去に犯歴や入国拒否歴がある方や、ETIASが却下されたケースなどの対応策が、現状の情報からではまだはっきりわからない部分が多いという点です。
例えば、アメリカのESTAに関しては、ESTAが却下された場合、「ビザ取得がアメリカ渡航の許可を得る唯一の方法である」CBPのウェブサイトに明言されています。一方、ETIASに関しては、却下の場合のビザ申請についての言及はなく、不服申し立てや限定的ETIASの申請に関する記述にとどまっています。イレギュラーなケースに関しては、今後の情報を注視する、かつ実際の運用において情報を集めることが肝要かと思われます。

