飲酒運転(DUI)歴がある方のアメリカビザ申請
- 行政書士佐藤智代法務事務所
- 10月25日
- 読了時間: 3分
新トランプ政権において、アメリカ国内の移民への圧力が強化される一方で、国外におけるビザ審査もさらに厳格化していると感じています。
今年に入り、新政権下ではさまざまな方針が打ち出されました。
〇学生・交流訪問(F/J/M)ビザ申請におけるソーシャルメディアのバックグラウンドチェックの強化〇H-1Bおよび高度技能外国人ビザにおける手数料・費用の大幅引き上げ
〇申請者が自国または法的居住国の米国大使館・領事館でしかビザ面接を受けられないとする新規定の導入
さらに今後は、学生・交流訪問(F/J/M)ビザの有効期間を最長4年、報道(I)ビザを240日に制限する方針も発表されています。
こうした方針が次々と示されるなかで、犯罪歴を有する方のビザ申請は以前よりもさらに厳格化していると感じています。
前政権下では許可されていたケースでも、現政権下では審査期間の長期化やより厳しい判断がなされる例が増えており、軽微な犯罪であっても申請のタイミングを慎重に見極めざるを得ない状況です。
事実、新政権下で、非常に軽微な犯罪歴でも強制送還やビザ取り消しを受けているアメリカ本土の非米国市民への対応方針により、アメリカ国外におけるビザ申請審査にも影響を受けていると考えています。
そのなかでも、大きな変化の典型例が DUI(飲酒運転)歴を持つ方のビザ申請 です。
これまで、弊所のブログでも触れてきましたが、単発のDUI歴は必ずしもビザ発給を阻むものではなく、5年以内のDUI歴がある場合でも、大使館指定医療機関において「アルコール依存症ではない」との診断書を提出し、一定期間を経て許可されるケースが大半でした。
しかし2025年、米国下院において 非米国市民がDUIで有罪判決を受けた、または飲酒運転を自白した場合に入国拒否や強制送還の対象とする法案 が可決されました。
これは従来「重罪」や「重大犯罪」に限られていた対象を、単発のDUIのような軽微なケースにまで拡大しようとする動きです。
これを受け、最近ではDUI歴が5年以内にある方の申請がより厳しく審査される傾向が否めません。
この法案発表を受けてか、CDC(米国疾病予防管理センター)は2025年8月に改訂した「Mental Health Technical Instructions for Civil Surgeons」において、米国永住権(グリーンカード)へのステータス調整申請時に アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder)の有無を確認することを正式に規定しました。
ここでは「飲酒運転(DUI)」がアルコール使用障害と関連する有害行為の代表例として挙げられています。
この指針によれば:
DUIなどの有害行為が直近1年以内にある場合、寛解(remission)とは見なされず、Class A(入国不可)に分類される可能性がある。
一方、最後の有害行為から12か月以上が経過し、DSM基準でアルコール使用障害に該当しない、または寛解状態と判断されれば、Class B(入国可能)として扱われる。
この発表を受けて、アメリカ国外の非移民ビザ申請も従来のように「診断書を提出すれば比較的スムーズに許可される」という運用から、DUI歴からの経過期間や再発リスクを厳格に評価する方向へシフトしていると言えます。
つまり、従来は比較的柔軟に扱われていた単発のDUIであっても、現在は米国下院の新法案やCDCの最新指針を背景に、審査が長期化したり、より厳しい判断が下される可能性があります。
そのため、DUI歴のある方がビザを申請する際には、「過去の経歴の開示」「医師の診断書や追加資料の準備」「申請時期の慎重な検討」 がこれまで以上に重要になります。
渡航計画を立てる際には、余裕を持ったスケジュールと十分な準備をお勧めします。





